『歓呼の町』(木下惠介)

1944年。町内で疎開が進められている、大田区っぽい一角。残っているのは飛行機の実験飛行を職にしている息子がいる琴の師匠の母(旦那は半端な仕事しかできないため半ば離婚状態)、子だくさんの印刷業者、風呂屋、町内会長(娘は恋愛中)といった町内の家族を描いた日常佳作作品。各家庭の事情をいろいろな角度から描きながら、基本は息子を事故(戦死)で亡くす母親の物語だった。引越しの荷物に「慎吾(息子の名前)夏服」と書いてあるところとか、ロクでもない旦那と情けない話をしながら歩く夫婦とか、「雲ふたつ会わんとしてはまた遠く別れて消えぬ春の青空」の若山牧水の歌と雲の映像とか、いろいろ素晴らしいショットが多すぎです。

木下惠介 DVD-BOX 第1集

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