『日本の悲劇』(木下惠介)

1953年。戦争中に夫を亡くした母親が、闇屋や熱海の女給(女中)をしながら娘と息子を育てる。娘は洋裁学校と英語の塾に通いながら、塾の先生と浮気して(というより、母親から逃げるために)岡山に行き、息子は医学部に通って開業医になるために子供のない医師の養子になる。出て来ている人たちのほとんどの女性が人の悪口と愚痴しか言わない、恐るべき愚痴映画。苦労して子供を育てても何一ついいことはない、という身もフタもない戦後の話で、ところどころにドキュメンタリー映画の破片とか挟んでありますが、あまり世相(社会の動き)とは関係ないですね。金がないのはとてもつらいことだということがしみじみ分かる映画でしょうか。音楽とか映像も地味、というかほとんど工夫なくて見ていていろいろつらい。話の内容はともかく、映像・見せるシーンの作りかたとか、木下惠介のベスト映画の一つかもしれない。もう、息子と母が、父親の墓参りをするシーンなんて、えっ、こんな風に映画って見せるんだ、ってびっくりする。
木下惠介の映画ってたいてい何か所かでびっくりするんだけど、この映画は特にそれが多い映画だったな。

木下惠介生誕100年 「日本の悲劇」 [DVD]

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